たかの日記 ~taka's diary~ バックアップ・バージョン

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ぼくがひきこもりになった理由。

 

布団を出たくない猫

布団を出たくない猫

 

あの頃は幸せな時代だった。

 

今は拠り所がなく糸が切れた凧みたいにただフワフワと漂っている。

 

優しかった父親が死んで、これからは独りで生きていかなくてはいけない。

 

昨日まで引きこもりだったのに途方に暮れている。

 

ふわふわと漂っていると、口やかましい母親がやってきて注意された。

 

やっぱり戦うしかないよな。

 

くよくよしている時間はない。

 

手始めに何をするかぼんやり考えているとお腹がぐうと鳴った。

 

取り敢えず何か食べようか。

 

戸棚にあった蜜柑をむしゃむしゃ食べていると猫がみゃー、と鳴いて近づいてきた。

 

尻尾がぴんと立っている。今日は機嫌が良いようだ。

 

猫のご飯の用意をしようと離れの自室に行くと、もう一匹似たような猫が猫用のベッドの上に寝転がっている。

 

やっぱり、みゃーと鳴いて甘えてくるものの、子猫の頃から可愛がっているメス猫のみーちゃんとは何かが違う。

 

みーちゃんはスラっとしたスタイルの良い猫だ。大きい眼がくりっとしていて睫毛が長く人間だったらけっこうモテるだろうという猫だ。

 

猫の世界にもモテる、モテないというのはどうやらあるみたいで、みーちゃんはオス猫によくモテる。

 

容姿が良いからというのではなく、木登りが上手だからだ。

 

とにかく高いところが好きで2階建ての家の屋根の上にもよく登っている。

 

家の中では食器棚の上。

 

車庫の吹き抜けの天井にある梁など登れそうなところは全てチャレンジしている活発な猫だ。

 

猫が高いところを好むのは外敵が侵入してこない安全な場所というのもあるし、もし外敵が近くにやってきた時でも高い所なら俯瞰して相手を見ることができ優位に立てる。

 

そんなハンターとしての習性がそうさせるのだが、猫の間では高い所に登れる=超かっこいい!なのだ。

 

そんなみーちゃんだけど、オス猫がまさか自分のベッドを占領するとは思わなかっただろう。

 

猫同士には優しいみーちゃんなのでケンカにはならないけど、みーちゃんによく似た猫がストーキングをするのでみーちゃんは嫌がっている。

 

2匹とも飼ってあげたいけど、ストーキングは困るよなぁ。

 

近所の作業小屋では今日も大工たちが木の加工をしたり、木材の荷運びをしている。

 

そういえば釣り道具の整備をしなけりゃ、とおもって車庫の釣り道具置きスペースに行くと、みーちゃんとみーちゃんによく似た猫がついてきた。

 

初夏の日差しに暖められたコンクリートの上で釣竿を立ててリールの巻き直しをする。

 

みーちゃんは目を細めながらコンクリートの上に寝そべってぼくがリールを巻く様子をじっと見ている。